ある男が穴に落ちた。穴が深くてはい上がれない
ちょうど通りかかった医者に助けを求めたが、医者は処方箋を穴に落として去っていった
次に通りかかった神父に助けを求めたが、祈りを書いた紙を穴に落として去っていった
次に友人がきた
「助けてくれ!」と声をかけると、友人は穴に飛び降りた
男は言った
「おいおい、2人とも落ちてどうする」
友人は答えた
「大丈夫。おれは前に落ちたことがあるから脱出の方法を知ってる」
なんだか、よくわからないアメリカンジョークのようですが、これは、わたしがはまっていた海外ドラマ(アメリカの大統領とその側近たちを描いたもの)の中でのセリフです(言い回しは正確ではありませんが)。
このセリフを言った本人がドラマの中でアルコール依存症の問題を抱えていたこともあって、これを聞いて、私が最初に思い浮かべたのは、「ピアサポート」という言葉でした。
「ピアサポート」とは、同じような立場の人によるサポート、同じような課題に直面する人同士が互いに支え合う活動のことです。アルコール依存で悩む人たちが集まってミーティングをして、自分の経験や今の状況、思いなどを語り合ったりする断酒会などが有名で、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
アルコールや薬物依存の問題に限らず、子育てに悩むママたちのサークル、障がいのある人の集まり、学生支援、自死遺族の集いなど世の中には色々な分野でピアサポートが行われています。
病気に関しても、肝臓病の患者会、ガンの患者会などがその役割を果たしていることも多いようです。以前もご紹介しましたが、「死生学講座第1回『笑う終活講座』」で講師をつとめてくださった波多江伸子さんも、ともにがんで亡くなったご両親を看取り、自らも二度甲状腺がんを患った経験から、何人もの、死に直面したがん患者の伴走者として活動し、「がん・ばってん・元気隊」という患者サポート活動に従事されています。
医療事故によって自分や大切なひとの健康や命を損なわれてしまった人たちの集まりもあります。
ピアサポートのいいところは、同じような課題を抱えているからこそ悩みを共有できたり、既に同じような悩みを乗り越えた先輩の経験を聞くことで、自分が抱えている課題の解決の糸口がみえたりすることだと思います。
自分が問題に直面したときはもちろんですが、問題に直面している人と会ったら、選択肢としてピアサポートを紹介できるようにしたいです。
もちろん、問題の解決方法として、祈り(宗教)や病気にかかった場合の医師の治療が重要な選択肢であることは言うまでもありませんし、弁護士に相談することで解決できる問題もありますので、相談してみてくださいね!
(緒方枝里)