2013年04月10日
医療研B班会議
当弁護団では、福岡の所属会員をA班・B班の2班に分け、それぞれ毎月1回、勉強会を開催しています。
私はB班に所属しているのですが、去る4月9日、今年度最初のB班会議が開催されました。
勉強会って、どんなことをしているのかと言いますと、以前は、最新判例報告が中心でした。判例タイムズや判例時報といった公刊物に掲載された医療過誤の最新裁判例をみなで検討するというものです。
これは、大変勉強になりました。我々は、医療過誤の専門弁護士を標榜していますので、そうでない弁護士より比較的多く医療過誤の事件を受けていると思います。とはいえ、1人の弁護士が受任する医療過誤事件の数は限られていますし、そのうち裁判にまで至るもの、さらに判決まで至るものというと、それほど多数とは言えません。
裁判例の検討は、ある意味で狭い自分の経験を広げてくれるものであり、特に経験年数の浅い若手弁護士にとっては、非常に意義のある勉強でした。
ところが。昨今、判例時報などの公刊物に掲載される医療過誤事件の件数が、めっきり減ってしまいまして・・・。最新の雑誌から、発表・検討にちょうどいい医療過誤の事案を2件見つけてくるというのが、なかなか困難になってきました・・・。
それが、医療過誤事件の件数が減っているのか、和解で落ちる件数が増えて判決にまで至っていないのか、はたまた患者側冬の時代と言われている情勢を反映し、患者側敗訴の判決ばかりであまり掲載価値がないのか、はたまたそれ以外の理由なのか、はよく分かりませんが、ともかく、最新判例報告のネタを見繕うのが大変になってきました。
そこで最近では、何かテーマを決めて、連続シリーズを企画しています。
過去には、
・書籍『医療訴訟』を読む
・「相当程度の可能性」論について
・損害論の研究
・「産科事故とわたし」に沿って
などなど、いろいろなテーマを設定してきました。
現在は、
・これだけははずせない!最高裁判例
・「法的責任の根拠としての診療ガイドライン」を読む
という2つのテーマが進行中です。
9日のB班会議でもこのテーマに沿って勉強会が行われました。
例えば後者については、今回は、最判平成17年9月8日、「帝王切開術による分娩を強く希望していた夫婦に対し、経膣分娩を勧めた医師の説明が、同夫婦に対して経膣分娩の場合の危険性を理解した上で経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務を尽くしたものとはいえないとされた事例」を検討しました。
事案の詳細は割愛しますが、発表者は、そもそも控訴審と最高裁で、説明義務の内容に質的な差があるのではないか、最高裁では、刻々と胎児が育って体重が増加していくことや、内診で複殿位であると判断していたことや、帝王切開術に移行するには一定の時間がかかることなども説明しておくべきとしており、その点が判断の差につながったのではないか、と分析しており、たいへん参考になりました(事案の詳細に興味のある方は、判例時報1912号16頁、判例タイムズ1192号249頁などをご覧下さい。)。
当弁護団では、このように、定期的な勉強会や、先日のブログにもあった事例検討会などを開催し、専門弁護士としての資質を高めるべく研鑽しているところです。
(石田光史)
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