ろ:労作性狭心症(effort angina)
冠動脈硬化を基盤として起こる。冠硬化により冠動脈狭窄が生じ、労作時の血流増加が制約される。このため生じる心筋虚血が胸心痛をもたらす。発作寺の心電図変化で診断。心筋梗塞の見落としによる広範な心臓機能障害を来たして、依頼人は医療研の門をくぐる。
労作性狭心症が前駆となり小規模の心筋梗塞から、大規模なそれへ移行してもなお見落とされることがある。胸心痛は、一様ではない。胸が痛いというよりは鳩尾が痛いとだけ言い、あるいは左肩から背中にかけて痛いとだけ言い、あるいは気分が悪くなんか不安がいっぱい、と言うだけのこともある。
発作を過ぎれば、心電図に異常が見られないことがある。また、心筋梗塞に特有の血液検査(CPK,GOT,LDHなど)における心筋由来の血清酵素値異常も急性期には一旦上昇するが、そのうちおさまる。元気そうで、酒、タバコが大好きで、がっしりとした大柄の体格。こんな人が見落とされやすい。
二つの事例がある。
二日酔いで気分が悪くなり、受診。心電図をとっても異常なし。左肩が痛いと言うがまあ様子を見ようということでそのまま帰す。無理して仕事について大規模な心筋梗塞の発作。治療の遅れによる不可逆的な心筋壊死。
深夜から、吐き気と胸苦しさと不安、風邪と思い受診。風邪と診断し風邪薬を出して帰す。このとき血液検査。後日の報告でGOT,LDHの異常値発見。肝癌のおそれがあるといって再診をさせ、再検査で正常値。念のため肝臓薬を処方。半年後の健康診断で陳旧性の広範な心筋梗塞性壊死を確認。
{類似語}心筋症(cardiomyopathy) 狭心症と症状が類似すると言われている。心筋の変性・壊死が血流循環不全の主たる原因であるところも似ているが、変性・壊死の範囲が冠動脈梗塞域に限られないところに違いがある。多くは原因不明とされ、既知の心疾患を除外して診断するとされる。
{一口メモ}心臓の痛みは肩や背中や鳩尾に
(八尋光秀)
2009年10月09日
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