2013年05月22日

絶えない歯科インプラントのトラブル


 美味しいご飯を食べることが一番の楽しみだという人は、私以外にも多くいらっしゃることと思います。ご飯を噛む、飲み込む、そして人と話をするためには、やはり、「歯」が必要です。

 そのため、歯周病や虫歯で歯を失ってしまった場合には、入れ歯やブリッジなどで補う必要がありますが、入れ歯であれば異物感があったり、ブリッジであれば前後の歯を削らなければならなかったりと、欠点もあります。

 そこで、「自分の歯に近い感覚が取り戻せる」として、近年、歯科インプラントが注目されてきました。歯科インプラントとは、歯がなくなったところの骨に金属を埋め込み、その上に人工の歯を作る方法です。トラブルが起きなかった場合には、自分の歯と同じように食事をすることができるようになります。


 一方で、国民生活センターには、歯科インプラントにより危害を受けたという相談が2006年以降の約5年間で343件寄せられており、相談件数は増加傾向にあるそうです。

 受けた危害の内容としては、歯や口腔の痛み、腫れ、痺れや噛み合わせの問題などがありますが、中には、唇や歯茎に麻痺が残った、痛みが取れず夜も眠れない、食べ物を噛めず体調を崩したなど、日常生活に大きな影響が及んでいるという相談も多く寄せられています。

 また、顎の骨に金属を埋め込む際に大量出血したケースや、最悪の場合、患者が亡くなったケースも報告されています。


 ではなぜ、歯科インプラントのトラブルが絶えないのでしょうか。

 一つ考えられる理由としては、歯科インプラントは自由診療であり、標準的な治療方法が定められていないという点があります。

 また、保険診療の場合と異なり、監督官庁の目も届きづらいため、十分な技術を持たない歯科医師が治療に携わっているという点も指摘されています。

 そして、残念な話ではありますが、歯科インプラントの治療費は歯科医師が自由に決めることができるため、高い収益を求めて、すべきでない治療まで実施されたという報告もあります。


 このような現状を受けて、歯科インプラントの安全性を高めるため、現在、複数の学会が協力して標準的な治療のルールを定めた指針の策定が進められています。また、学会、大学及びメーカーの連携により、歯科医師の教育環境も整えられつつあります。

 しかしながら、まだまだ、安全対策は不十分です。


 それでも歯科インプラントを受けるのであれば、信頼できる病院選びが、何よりも大切になります。

 病院が信頼できるかどうかを判断する基準として、一つ目には、 歯科医師が十分な問診や検査(CT検査など)を行った上で、適応やリスクについてきちんとした説明をしてくれたかどうか、ということが大切だと思います。

 二つ目には、歯科インプラントは早急にしなければならない治療ではないので、契約することを急がせない、ということも大切だと思います。


 歯科インプラントの相談は、私たちの弁護団にも複数寄せられています。また、全国を見ると、多くの訴訟が提起されています。

 私が相談を受けた方の場合は、お話を伺う限り、そもそも歯科インプラントの適応がなかったとしか思えないケースでした。ところが、無理に治療を行った結果、短期間のうちにインプラントが全て脱落し、その上、インプラント周囲炎により、自歯まで抜かざるをえなくなっていました。

 ちなみに、この治療にあたった歯科医師は、歯科インプラントの適応やリスクに関する説明は殆どないまま、数百万円(!)の治療費の前払いを要求したそうです。

 相談者は、インプラントが全て脱落した後、病院に対して治療費の返還を求めましたが、返還を拒まれたので、弁護士の相談に来られたのでした。

 
 このように、まだまだ問題は残っている歯科インプラントですが、今後も需用は伸びていくだろうと思われます。

 歯科インプラントを望む患者が安心して治療を受けられるよう、ガイドラインの策定や、歯科医師への研修など、引き続き積極的な対策がとられることを期待します。

(中西俊枝)
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2013年05月07日

乳幼児医療費助成制度


 わが家のもうすぐ2歳児は,本当によく病気にかかります。さっきまで機嫌良く遊んでいたと思ったら,突然吐いて,高熱を出して,ぐったり・・・。その度に,病院まで子どもを連れて行き,小児科医の「大丈夫ですよ。」の言葉をもらってきました。こんなことが何度繰り返されたことやら。


 これは,わが家のもうすぐ2歳児が病弱だからではありません。乳幼児は免疫力がまだ弱く,大人だと平気なものでも敏感に反応し,体調を崩してしまうからです。しかも,体力がないので,重篤化しやすい傾向にあります。

 病気にかかりながら免疫力を付けていくので,悪いことではないのですが,親としてはやはり心配です。


 現在,乳幼児医療費助成度が全国で整備されており,乳幼児の医療費の一部もしくは全額について行政の補助が受けられるようになっています(助成の内容は,都道府県で異なります。)。

 乳幼児は体調の変化を泣くことでしか訴えることができず,また,核家族が進んだ現在では親も子どもの体調の変化にうまく対応することができない状況にあります。そのため,乳幼児医療費助成制度は,全国の乳幼児を抱える親にとって,安心して育児にあたることができるための不可欠な制度となっています。

 医療費の無料化はコンビニ受診を増加させるという声もありますが,医療費を気にして,受診を躊躇してしまい,子どもに必要な医療を受けさせられないことの方が問題ではないでしょうか。

 親も,子どもの病気について初体験なことばかりですので,結果として重篤な病気でなくても小児科医から「大丈夫ですよ。」という言葉をもらいながら,親として成長していくのだと思います。


 政府は,環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加を決めました。

 TPPは,農産物の輸出入だけの問題ではありません。TPPは,原則的に全品目の関税を撤廃することを目指していることから,これにより医療においても混合診療が増加し,国民皆保険制度が崩壊するとも言われています。そうなれば,乳幼児医療費助成制度も危うくなってしまいます。マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」のような世界になってしまうかもしれません。

 もうすぐ2歳児を抱える親としては,TPP交渉の行方をしっかり監視しなければと思います。

(佐川民)

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