2013年03月15日

事例検討会に参加して


 私たちの弁護団では、毎月1回、医師及び薬剤師を交えて、事例検討会を開催しています。ここでは、弁護士が抱えている医療事件を持ち寄り、集団で事案の検討を行っています。
 事例検討会で検討してもらうためには、事前に、依頼書を送ることとされています。そして、当日は、報告担当者が、依頼書をもとに事案の概要や疑問点などを報告し、参加者で討議を行います。

 医療事件は、専門性が高い分野ですので、医師、薬剤師、そして経験豊富な弁護士から意見を聞くことができるこのような機会は、とても有意義だと感じています。自分以外の弁護士が担当している案件の検討会は、いつも勉強になり、知的好奇心が刺激され、とても楽しい時間です。
 しかし…自分が担当者となると、実は、数日前から、緊張のあまり胃がキリキリと痛んでおります。

 というのも、まず、依頼書を作成することが一つ目の山場なのです。
 通常、医療事件の記録は、カルテだけでもかなりの量があり、さらに、参考文献や裁判例などを加えると、ファイル数冊分にわたります。しかし、事例検討会では、一回で数件の事案を検討するため、自分の案件だけで、参加者を長時間拘束するわけにはいきません。
 そのため、参加者に、短時間で、事案の概要や疑問点を把握してもらい、基本的な医学的知見も示すとなると、簡にして要を得た依頼書の作成が求められることになります。
 私は、弁護士になって4年目ですが、まだまだ医療事件はヒヨッ子です。そのため、どのような事実を拾えば、自分の疑問点を正確に伝えることができるのか、いつも頭を悩ませるところです。

 そして、共同受任をしている先輩弁護士に教えを請いながら(弁護団では医療事件は複数で受任することになっています)、何とか依頼書を完成させ、事務局にファックス送信した後は、二つ目の山場である、当日きちんと報告できるだろうか、という心配が始まることになります。
 調査を進めている間は、パソコンで文章や表を作成することは多くありますが、医療用語を口に出すという機会はさほどありません。そのため、いざ事例検討会での報告となると、読みが分からない単語や、正確な意味が分からない略語などが出てきてしまうのです。

 小心者な私としては、依頼書の作成と、用語の確認までは、何とか済ませて事例検討会に向かうのですが、最後の関門は、報告中に出てくる新しい話についていけるのか、という問題です。
 私はこれまで、何度か報告を担当し、また、他の弁護士の報告も聞いてきましたが、ほとんどの事案で、新しい観点からの検討が加えられます。
 例えば、「この検査の結果は?」「どういう薬を使っていたの?」などの質問が、参加者から報告者に投げかけられ、質問に報告者が答えると、「であれば〜だと思うが、この点については検討済みですか?」といったように、検討が深まっていくのです。

 自分が時間をかけて調査してきた点とは違うところに実は大きな問題があると指摘を受けたり、責任追及ができると思っていた事案について難しいという回答を受けたりするなど、冷や汗をかきながら報告を終わらせた頃には、いつも大きな収穫を得ています。

 たしかに、事例検討会の結果、責任追及すべきという結論となれば、その後の事件処理に弾みがつくことは間違いありません。
 しかし、責任追及困難な事案について、そのように指摘を受けることも、時間的にも金銭的にも依頼者に負担をかける裁判を始めるか否かを決定するにあたって、とても大切なことだと思っています。

 医療関係者を交えた事例検討会というのは、全国でもあまり例がないと聞いています。
 このような地盤を作られた先輩方に感謝しつつ、今後も、事例検討会に参加していきたいと思います。

(中西俊枝)
posted by 管理人 at 18:44| Comment(1) | TrackBack(0) | その他